トマトの育て方|夢印栽培20年

実践的なトマト栽培方法を写真と図版でわかりやすく解説

トマト 新芽 チリチリ

トマトの新芽部分がチリチリとして様子がおかしいのは、なぜでしょう?


トマト栽培において、株の先端にあたる「生長点(新芽)」は、その株の健康状態を映し出す鏡のような場所です。

毎日観察していると気づくかと思いますが、トマトの茎は株元に近ければ近いほど太く頑丈で、上に向かうにつれて少しずつ細くなっていくのが本来の正常な姿です。

しかし、単に細いというレベルを超えて、新芽の葉がまるで針のように細くなったり、チリチリと縮れて萎縮し始めたりした場合は、株からの深刻なSOSサインです。

この生長点の異常放置は、最悪の場合、その後の収穫が完全にストップしてしまう致命的な事態を招きかねません。

先端がチリチリになる現象の裏には、大きく分けて「重大な感染症」と「肥料の与えすぎ」という、全く異なる2つの原因が潜んでいます。

今回は、この厄介な新芽のトラブルを見極めるポイントと、それぞれの正しい対策について詳しく解説します。


■ モザイク病の脅威とアブラムシの媒介

 

モザイク病にかかったジャガイモ


・モザイク病

新芽が異様に細くなり、葉がちりちりと縮れてきた時に、まず警戒しなければならないのが「モザイク病」という植物ウイルスによる病気です。

モザイク病を発症したトマトは、生長点付近の新しい葉が正常に開かず、糸や針のように細く尖った異様な形に変形していきます。

さらに葉をじっくり観察すると、緑色の濃い部分と薄い部分が斑点状に混ざり合い、文字通り「モザイク模様」や「かすり柄」のようになっているのが特徴です。

症状が深刻化すると、葉の変形にとどまらず、せっかく実った果実の表面にも茶褐色の不規則な病斑が浮き出てしまい、売り物や食べ物にならない状態にまで悪化します。

近年の植物病理学における遺伝子(DNA/RNA)研究の進展により、モザイク病の原因となるウイルスには非常に多くの系統が存在し、それらが複雑に変異を繰り返していることが分かっていますが、家庭菜園の現場でその種類を正確に特定することは極めて困難です。

そして最大の脅威は、このモザイク病には「一度感染すると治療できる薬剤が存在しない」という点にあります。

・アブラムシの媒介

ウイルスの多くはアブラムシなどの吸汁害虫が汁を吸う際に媒介するため、最大の予防策は、とにかく株にアブラムシを寄せ付けない環境作りを徹底することに尽きます。

もしも運悪く感染株を見つけてしまった場合は、他の健全なトマトへ感染が拡大するのを防ぐため、涙をのんで株ごと速やかに抜き取り、畑から遠ざけて処分(廃棄)するしかありません。

その際、病気の株に触れた手や手袋のままで他の株を触ると、それだけでウイルスを伝染させてしまう「汁液伝染」が起こります。

抜き取り作業で使用した手袋はすぐに洗い、ハサミなどの刃物も洗剤で洗うかライターの火であぶる(火熱消毒)など、完全に滅菌してから次の作業に移ることを徹底してください。


■ 窒素過多による「芯止まり」と肥料コントロール

新芽が縮れるもう一つの大きな原因は、病気ではなく、人間側の管理ミスによる「窒素過多(肥料の与えすぎ)」です。

トマトを大きく元気に育てようとするあまり、良かれと思って規定量以上の追肥を続けてしまうと、土壌中の窒素成分が過剰になり、株全体のバランスが崩れてしまいます。

窒素が多すぎると、茎葉ばかりが異常に茂る「過繁茂(かはんも)」や、木だけが暴れて実がつかない「樹ボケ」を引き起こすだけでなく、生長点が急激に萎縮して伸びが止まってしまう「芯止まり(しんどまり)」という恐ろしい現象を引き起こします。

芯止まりを起こしたトマトは、先端の新芽部分が極端に硬く小さく塊のようになり、そこから上へ生長することができなくなります。

トマトは上へ伸びながら新しい花房(実の成る房)を増やしていく性質があるため、生長点が止まるということは、それ以上の収穫量がまったく望めなくなることを意味します。

それだけではなく、すでに着いている下の房の実にも悪影響が及び、実が大きく膨らまなくなったり、花がポロポロと落ちる着果不良を多発させる原因にもなります。

近年の園芸トレンドでは、こうした肥料のやりすぎによる失敗を防ぐため、ゆっくりと優しく効果が続く「緩効性肥料」を活用したり、元肥を少なめにして株の様子を見ながら微調整していく栽培法が主流となっています。

「肥料を与えれば与えるほど豊作になる」というのは大きな誤解であり、過剰な栄養はむしろ毒になって生育不良を招くということを肝に銘じておきましょう。


■ 肥料過多を見分けるためのチェック項目

新芽がチリチリしている原因が、深刻な「モザイク病」なのか、それともリカバリー可能な「窒素過多」なのか迷った場合は、株全体に現れる別のサインをチェックしてみましょう。

もし原因が窒素過多(肥料過多)である場合は、新芽の萎縮に加えて、以下のような特有の随伴症状が必ず株のどこかに現れます。

 

葉や実の色が濃い、茎が太い、樹が暴れているのは窒素過多です

 

まず分かりやすいのが「葉の色」です。窒素が過剰な株は、遠目から見ても明らかに異常なほど、どす黒いディープグリーン(濃緑色)に変色します。

次に「葉の形」です。上部の若い葉が、まるで内側へ巻き込むように不自然にくるりとカールしたり、ゴツゴツと波打つように硬化する現象が見られます。

さらに「茎の太さ」にも注目してください。生長点の手前あたりにある軸(主枝)が、大人の親指ほどもある異常な太さになっている場合は、完全に肥料の吸いすぎで株が暴れている証拠です。

これらのサインが確認できた場合は、病気ではなく肥料過多の可能性が極めて高いため、ひとまずは一切の追肥をストップし、水やりによって土の中の余剰な肥料成分をじわじわと流し出すような管理に切り替えて、株の体力が自然に落ち着くのを待ちましょう。