トマトの育て方|夢印栽培20年

実践的なトマト栽培方法を写真と図版でわかりやすく解説

トマト苗 高温障害

今年のフルティカ一番果、夏に強いのも魅力、草勢は抑えて栽培しています


■ 夏に強いトマトも暑さでバテる?

トマトは夏の太陽を浴びて元気に育つイメージが強いため、気温が高くても問題ないと思われがちです。しかし、実はトマトも過酷な暑さにさらされると、体調を崩して成長が止まってしまうことがあります。

トマトが元気に成長できる最高の温度は、およそ20度から30度の間と言われています。多少の前後であれば耐えられますが、40度を超えるような猛烈な暑さが続くと、トマトは成長をピタリと止めてしまいます。

真夏に厳しい暑さが続いたとき、それまで調子の良かったトマトが急に元気をなくしたり、株の勢いが衰えて実の付きが悪くなったりするのは、暑さによる障害が出ているサインです。暑さで花の質や花粉の元気が落ちるため、形の悪い実ができる原因にもなります。

ちなみに寒さに対しては5度くらいまで耐えられますが、冷たい風に当たると急激に弱って枯れ込むことがあります。暑さに負けずにたくさんの実をつけてくれるトマトですが、人間と同じように、暑すぎる日が続くときはできるだけ涼しい環境を作ってあげる工夫が、豊作を導く大切な一歩になります。


■ 暑さが苗に与える深刻なダメージ

トマトの苗が限界を超えるような高温に当たると、特有のトラブルが発生します。最も分かりやすく目立つ症状が、花が咲いても実にならずに落ちてしまう現象や、実の付きが極端に悪くなるトラブルです。

苗を育てている時期は、茎や葉を丈夫に大きくすることだけでなく、地道に準備が進んでいる花芽(はなめ)をしっかり作ることが極めて重要になります。トマトは実を収穫する野菜ですから、花が正常に咲かなければ、当然ながらその後に実を収穫することはできません。花が咲いたとしても、暑さのせいで不完全な形になってしまっては、美味しい実を実らせることが難しくなります。

特に苗を育てている大切な時期に、締め切った室内や温室などの過度な高温に当ててしまうと、花を作る準備がうまく進まなくなります。その結果、最も重要とされる「最初の段(一番花)」の花付きが著しく悪くなってしまいます。

トマト栽培では、この最初の段にしっかりと実を実らせることが成功の最大の鍵です。最初に実がつくことで、株全体の栄養が実に行き渡り、茎や葉ばかりが暴走して茂るのを抑えるバランスが保たれます。ここに実がつかないと、その後の段の花付きや実の付きまでドミノ倒しのように悪くなる傾向があります。最初の段を確実に実らせるためにも、苗の時期や植え付け直後の極端な高温には細心の注意を払いましょう。

 

6月下旬、通販から送られてきた苗、配送中の高温か温度差が原因のようです

すぐ画像を撮っておいたので、良苗に交換してもらえました


■ トマト苗を過酷な暑さから守るコツ

大切なトマトの苗を恐ろしい高温から守るためには、こまめな温度管理が何よりも欠かせません。特に畑や大きなプランターに植え付ける前のデリケートな育苗期間中は、寒さだけでなく、反対に上がりすぎる温度にも警戒が必要です。

苗を置いている場所には必ず温度計を設置して、現在の状況をしっかりと目で確認できるようにしておきましょう。ビニールトンネルや家庭用の小型温室などを使って苗を育てる場合は、この温度計の数字を基準にして、日中の風通しや換気を行うことが鉄則です。

春先になると、夜から朝にかけては冷え込むものの、日中は驚くほど気温が上がる日が増えてきます。「寒さに当たるとかわいそうだから」と、ビニールを完全に密閉したまま管理していると、晴れた日の日中には内部が遮熱されずにあっという間にサウナのような高温になってしまいます。

 

いろいろ手を尽くしましたが、助けられなかった中玉トマト苗

 

日中に適切な換気を行って空気を入れ替えることは、こもった湿気を逃がすことにも繋がります。これにより、カビなどの病気や害虫の発生を防ぎ、茎が細くヒョロヒョロと間伸びしてしまうトラブルを防ぐ効果も期待できます。

一般的に、気温が36度以上になるとトマトの花粉は活動する能力を失ってしまうと言われています。苗を育てているときも、畑に植え付けた後も、日中の気温が35度を超えないように遮光ネットなどで日よけを行い、上手に温度をコントロールしてあげることで、しっかりと実を結ぶ健康で立派な花を咲かせることができます。

近年では、こうした地球温暖化にともなう気候変動や夏の猛暑に対応するため、暑さに抜群に強い耐性を持った新しい品種の開発が盛んに進められています。また、家庭菜園の現場でも、スマートフォンのカメラ機能を利用して苗の葉の様子から水分ストレスや高温の兆候を事前に察知する「スマホ農業診断技術」などの便利なシステムが身近に使われ始めています。こうした最新の知見や便利な道具を上手に日々の管理に融合させることで、過酷な夏でも失敗のリスクを格段に減らすことができます。